四季報の写経で鍛える「瞬考」の力──山川隆義『瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す』を読んで

書籍と向き合う

※この記事では、「色」や「空」といった『色即是空』の概念を扱っています。
※「色」と「空」、そして『色即是空』の意味をより深く知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。

色を見て、空を感じる

山川隆義さんの『瞬考』は、瞬時に仮説を立てる力を磨くことをテーマにした一冊です。

タイトルの「瞬考」という言葉を目にした瞬間、頭の中で光が走るようなイメージが浮かびました。直感と理性が交差し、一瞬で思考を跳躍させる──その感覚を、本書は描こうとしているのだと思います。

四季報の写経という手法

特に面白かったのは、四季報を写経するという手法です。

数字や文章をただ眺めるのではなく、手を動かし、目で追い、体に染み込ませる。そうして「色=データ」から「空=関係性」を読み取り、瞬時に仮説を生み出す力を鍛える。

目に映る数字は一見すると無機質ですが、その背後には企業の息づかい、業界の流れ、未来の可能性が潜んでいるのです。

面白さと物足りなさ

ただ、読みながら少し物足りなさも感じました。

写経を通じて仮説力を養うことは理解できます。ですが、その「色」をどう「空」へ変換するのかが、十分に具体的に語られていなかったのです。

「色」を「空」へ変換するプロセス

たとえば、売上や利益の数字から企業同士の競合関係や補完関係をどう見抜くのか。あるいは業界全体の構造をどう想像するのか。

そこまで踏み込んで示されていれば、写経は単なる作業ではなく、「洞察の稽古場」としてもっとリアルに腑に落ちたはずです。

仮説力を磨く小さな訓練

それでも本書は、直感と思考の交点を意識させてくれる一冊です。

四季報を写経し、手を動かす。色を見て、空を感じる。その積み重ねこそが瞬考の入り口になります。

色とは数字や事実。空とは企業や業界の関係性や構造。

色を追い、空を感じる。その過程で、脳は「瞬時に仮説を立てる回路」を育てていくのだと思います。

色から空を読む具体例

仮に、A社の売上が前年比10%増。B社が同じ業界で8%減。

この数字をただ眺めるだけで終わらせるのか。あるいは、空として結びつけて考えるのか。

仮説を生み出す瞬間

A社の増収は、新製品や市場の変化の影響かもしれない。
B社の減収は、A社との競合や業界構造の変化が影響している可能性がある。

写経によって培われた瞬考力があれば、この数字を見た瞬間に「なぜこうなったのか」「次はどうなるのか」と仮説を立てられる。

色は空に溶け、見えなかった繋がりが浮かび上がるのです。

読書を実践に変える

読書の価値は、文字を追うことにとどまりません。

本に書かれたことを、自分の思考で咀嚼し、実践に落とし込むことこそ大切です。

『瞬考』が与えてくれるもの

『瞬考』は、瞬時に仮説を立てるという目標を示しつつ、その先にある「色から空を読み取る感覚」を鍛えるためのヒントを与えてくれます。

四季報の数字に目を凝らし、関係性を想像する。手を動かしながら思考を重ね、仮説を瞬時に描き出す。

小さな訓練の積み重ねが、やがて大きな洞察力となり、意思決定や思考のスピードを変えていく。

色と空を見つめる旅は、思考の自由と発見の扉を開いてくれるのだと思います。す。

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