空がない色に溢れる日々──煩悩と向き合うための気づき

自分と向き合う

※この記事では、「色」や「空」といった『色即是空』の概念を扱っています。
※「色」と「空」、そして『色即是空』の意味をより深く知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。

空がない色が溢れすぎる

「関係性」とは、人とのつながりだけでなく、物・時間・期待・役割との結びつきも含まれます。
仏教では、こうした関係性によって成り立つ世界そのものを「空(くう)」と呼びます。

つまり、何かがあるようで、実体のないもの。
あらゆるものは、関係性の上に仮に「ある」ように見えるだけなのです。

けれど──私たちは「色(しき)=形あるもの」にとらわれてしまいます。

たとえば、お金、権力、SNSでの“自分”を保つために日々を切り売りする。
気づけば、色(かたち)を守るために必死になり、本来の「空」を忘れてしまっている。
これが、煩悩の正体ではないでしょうか。

煩悩とは、色が“自分”を支配しはじめたとき

「色即是空、空即是色」──有名な般若心経の一節です。
色(見えるもの)は空(実体のないもの)であり、空もまた色である。

では、なぜそこに「煩悩」が生まれるのでしょうか?

それは、私たちが「色」の裏側にある「空」を感じていないからです。
お金、他人からの評価、社会的役割、肩書や地位──これらはすべて、一時的な「色」にすぎません。
私たちは知らず知らずのうちに、その「色」を「本物」だと信じてしまうのです。

しかし、その裏には常に関係性や背景という「空」が存在しています。

この「色」に執着すればするほど、「空」は見えなくなり、やがて自分自身を苦しめる。
これこそが、まさに「煩悩」の正体ではないでしょうか。

「空」を手放さずに生きるための問い

ある日、関係性に追われて心がざわついていたとき、ふと立ち止まった瞬間がありました。
仕事や家のこと、人付き合い、SNS、地域の役割──
そのすべての色にきちんと応えようとして、
気づけば自分の時間も心も細かく切り売りしているような感覚。
そんなとき、胸の奥からひとつの問いが浮かびました。

どれが大切な空なのか?

関係性は、無数に存在します。
でもそのすべてに同じ重さで関わっていたら、自分が消耗してしまいます。

だからこそ、「問い続ける姿勢」が必要なのです。

  • これは、本当に私にとって大切な関係性か?
  • それとも、ただ義務感や惰性で続いている関係か?
  • この関係性は、私を成長させてくれているか?苦しめているか?

この問いかけを、日々忘れないこと。
それが、「空」を見失わないための智慧なのだと思います。

空は、無関心ではない。むしろ最も深い“つながり”かもしれない

「空」と聞くと、「無」や「冷たさ」みたいな印象を持つかもしれません。
でも実際は、もっと温かくて、深いものです。

子どもの寝顔を見たとき。
風が木々を揺らす音に耳をすましたとき。
何も語らずとも通じ合えた誰かとの沈黙。

そういう瞬間に、人は「空」に触れているのかもしれません。
言葉では説明できないけれど、たしかな“つながり”を感じる。
それこそが、本当に大切にすべき「空」なのだと思います。

さいごに──色と空のバランスのなかで

この世界に生きる限り、私たちは「色」をまとい続けます。
人間関係、社会的立場、家族のなかの役割──
それは生きている証でもあります。

けれどその一方で、「空」を見失ってはならない。

色に飲まれず、空を忘れず。
問いを持ちつづけ、仮の世界に“本気”で向き合う。

そして、今日一日だけでもいい──
自分にとって大切な「空」を守る時間をつくってみる。

それが、生きるということの深みなのかもしれません。

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