朝のチャーハンと「ありがとう」

家族と向き合う

※この記事では、「色」や「空」といった『色即是空』の概念を扱っています。
※「色」と「空」、そして『色即是空』の意味をより深く知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。

朝の台所での選択

炊き立ての白いご飯

朝の台所に立つと、ふたつの選択が私を迎えた。
炊き立ての白いご飯。
前日の夜に妻が鮭を混ぜ込んだご飯。

心の葛藤

どちらを使うべきか、心の中で小さな葛藤が生まれる。
妻ならきっと、鮭ご飯でチャーハンを作ってほしいと思うだろう。
けれど、私の手は自然と炊き立てのご飯をつかみ、納豆と一緒に炒め始めていた。

フライパンの中で

フライパンの中で、香ばしい匂いが立ちのぼる。
「これでいい」と思う自分と、
「いや、怒られるかもしれない」と知っている自分。
そのどちらも抱えながら、私は納豆チャーハンを完成させた。

妻の反応

案の定、妻は言った。
「鮭ご飯、あったのに。それで作ればよかったのに」
ただただ、私は「ごめんね」と返す。
自分がそう作りたかったのだから、受け止めるしかない。

娘とお茶の温度

娘の体調と要求

食卓のあと、娘が「おなかが痛い」と言った。
私はすぐに、ぬるめのお茶を用意する。
少なめに注いだつもりだったが、娘は「ちょっと多い」と不満をもらす。

娘の反応と妻の対応

それでも娘は、コップを傾け、すべてを飲み干した。
そして、ふいに「おかわり」と言った。

今度は妻が用意した。
けれど、そのお茶はあまり温かくなかった。
娘はすぐに顔をしかめ、「冷たい!」と口にした。

「ありがとう」のゆらぎ

妻の言葉

その瞬間、妻が娘に言った。
「文句ばかり言ってないで、『ありがとう』の一言くらい言えないの?」

微笑ましさ

私はその光景を見て、思わず心の中で笑ってしまった。
なぜなら、その言葉は妻にも当てはまるからだ。
妻は、私の作ったチャーハンに「ありがとう」とは言っていない。
それなのに娘には「ありがとうを言え」と促す。
――親子だな、と微笑ましく思ったのだ。

言葉を控える選択

けれど、私は口には出さなかった。
妻は少し体調が悪そうで、心がささくれているように見えた。
そのイライラの色が、私には目に見えてわかる。

そんなときに私の言葉(色)をぶつけても、
彼女の気持ちはますます強まるだけだろう。

だから私は黙った。
代わりに、娘の歯磨きや着替えを無言で手伝った。
いつもより家を出る時間が遅くなっても、やりきった。

小さな光としての一言

玄関での「ありがとう」

玄関で靴を履き、「いってきます」と言ったそのとき。
背中に「ありがとう」という声が届いた。
妻の口からこぼれた、その小さなひと言。

一言の力

それは納豆チャーハンを作った私への「ありがとう」ではないかもしれない。
娘の世話を手伝ったことへの感謝かもしれない。
理由はなんでもいい。

ただ、その一言があれば十分だった。
朝のざわめきも、葛藤も、すべてがその言葉に吸い込まれていった。

「これでいいのだ」と心の中でつぶやきながら、 私は外へと歩き出した。

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