“現代の脆弱性”をつくり出す三角形
気がつくと疲れている。
思考が落ち着かない。
不安が理由もなく増える。
子どもの集中力が続かない。
体が重いのか、心が重いのか判別がつかない。
こうした「説明のつかない脆弱さ」は、現代人がほぼ共通して抱えている問題です。
睡眠・メンタル・免疫・代謝……あらゆる領域の不調が複雑に絡み合い、原因が一つに定まらない。
しかし、複雑に見える現代の不調を“一つの構造”として整理できる視点があります。
鉄欠乏 × 鉛 × ストレス
この三角形が現代の脆弱性をつくっている。
最新の生理学・神経科学・環境毒性学が示すのは、
- 鉄は単なる“栄養素”ではなく体のOS(基礎設定)
- 鉛は低濃度でも神経や行動を揺らす“静かな毒”
- コルチゾール(ストレスホルモン)は適応の要だが、代謝が乱れると体を壊す
という事実。
そして、この三つは互いを増幅させる「悪いコンボ」を持っています。
個別では問題がなくても、組み合わさった瞬間に毒性・不調のスケールが跳ね上がる。
本章では、この三角形がどのように形成され、どこに介入すべきかを体系的に整理します。
“鉄は単独では語れない”時代の始まり
本章の中心メッセージは、これに尽きます。
「鉄は、栄養素ではなく、環境毒性とストレス反応の“基準値”である」
これまでは、
- 鉄 → 貧血
- 鉛 → 子どもの知能低下
- ストレス → メンタル不調
と、完全に別領域として扱われてきました。
しかし実際には、鉄の充足状態が悪くなると、
- 鉛の吸収率が上がる
- 鉛の排泄が遅れる
- ストレスホルモンの代謝が破綻する
- ドパミン・セロトニンが乱れる
- 免疫が“無防備”になる
という多系統の機能が同時に低下する。
鉄は体内のさまざまなシステムに“扇風機の軸”のように位置し、
これがズレるとすべての羽根の回転バランスが崩れます。
鉄不足が鉛の毒性を増幅するメカニズム──静かに蓄積する“未可視の毒”の正体
身体は鉄と鉛を「よく似た金属」として扱う
小腸には金属イオンを取り込む DMT1 があります。
これは鉄(Fe2+)のための吸収装置ですが、鉛(Pb2+)も“金属”として同じ装置から入ってしまう。
鉄が不足すると、身体は
「鉄をもっと取り込め!」
と指令する。
すると DMT1 が増え、
- 鉄→吸収が増える(ように見える)
- 鉛→本来より多く吸収されてしまう
という現象が起きます。
つまり、鉄不足があるだけで、鉛が“毒量”になりやすい。
鉛は鉄を必要とする“ヘム合成”を妨害する
鉛は吸収されるだけではありません。
赤血球をつくる ヘム合成の要所となる酵素を次々に阻害します。
- δ-ALA脱水酵素
- フェロキシダーゼ
- フェリチン構築
ここに鉄欠乏が重なると、
- 鉄がない → 赤血球が作れない
- 鉛が酵素を止める → さらに作れない
という 二重の不足 が起きる。
これにより、
- 疲労
- 集中力低下
- 頭痛
- 息切れ
- 子どもの学習や注意力の揺らぎ
まで連鎖的に起こる。
コルチゾール代謝と鉄──“ストレスに飲み込まれる体質”が生まれる瞬間
コルチゾールは悪ではありません。むしろ、
- 朝の覚醒
- 集中力UP
- 血糖維持
- 炎症制御
に不可欠。
問題は、
「必要なときに上がり、不要なときに下がる」
この切り替えができないこと。
切り替えの司令塔は肝臓の CYP450 酵素群。
この酵素活性には鉄が深く関わります。
鉄不足になると、
- コルチゾールが代謝されず残る
- 夜になっても下がらない
- 眠りが浅い
- 脳が常時緊張
- 免疫が慢性抑制
という悪循環に。
さらに、
- 鉛 → 神経過敏
- 鉄不足 → ストレスホルモンが下がらない
この2つが重なると、
「ストレスに飲み込まれる体質」 が成立します。
加工食品・水道・環境因子──三角形を“日常化”させる現代の落とし穴
鉄欠乏 × 鉛 × ストレスは、特別な場所だけで起こる問題ではありません。
むしろ現代生活そのものが三角形を固定化しています。
加工食品と鉄吸収阻害の連鎖
加工食品に多い添加物(リン酸塩など)は、
- 鉄吸収の阻害
- 腸粘膜を荒らす
- 血糖の急上昇・急降下(ストレス刺激)
を引き起こす。
鉄が入らない → ストレスは増える → 鉛毒性が強まる
という静かなスパイラルへ。
水道管・古建築・土壌の微量鉛
日本は世界的に見れば安全ですが、
- 古い水道管
- 建築資材
- 工場跡地の土壌
には微量鉛の混入リスクが残っている。
通常量なら問題にならないが、
- 鉄欠乏という“増幅条件”
- 子どもはDMT1が活発で鉛吸収が高い
これらが揃うと、影響は無視できなくなる。
ガソリンと鉛──“現代の鉛問題”の背景にあった巨大な歴史
20世紀の多くの国では、ガソリンのノッキング防止 のために
テトラエチル鉛(TEL) が大量に使われていました。
- 燃費が向上
- エンジン損傷を防ぐ
- 車の性能向上に寄与
という利点があったため、世界中に普及。
しかしその代償は、
- 大気中への鉛の大量放出
- 土壌・道路沿いの鉛汚染
- 子どもへの神経影響
- 犯罪率・社会行動への影響に関する研究
と“静かな公害”を招いた。
世界的には段階的に無鉛化されましたが、
過去の残留鉛は現在も土壌や都市部に痕跡を残しています。
ここに、
- 鉄欠乏(吸収増加)
- ストレス(脳の脆弱性)
が重なると、
微量であっても“現代の脆弱性”を形づくる要因となり得る。

結論:現代の不調は「鉄欠乏 × 鉛 × ストレス」という三角形の破綻
- 鉄欠乏
- 微量の鉛曝露
- 慢性ストレス社会
これらは互いに増幅し合い、単独では説明できない多系統の不調を引き起こす。
しかし同時に、
三角形を整えれば、多系統が一気に回復する
ということでもあります。







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