経営は「経を営む」ことから始まった
「経営」という言葉の語源をご存じでしょうか。
もともとは仏教に由来し、「経(きょう)を営む」という意味から来ていると言われています。
仏の教え──つまり、人としてよりよく生きるための道しるべ(=経)を、
日々の行いのなかで実践していくこと。
それが、本来の「経営」だったのです。
単に利益を出すことでも、事業を拡大することでもない。
どう生き、誰と生きるかという問いを抱え続けること。
その営みこそが、経を営む=経営なのだと思います。
つながりの時代に問われる「誰とどうつながるか」
いま、世界は「つながり」に満ちています。
SNS、オンライン、グローバル……かつてないほど、人も情報も結びついている。
けれど、それは本当に豊かなつながりでしょうか?
仏教的にいえば、大切なのは「縁(えん)」です。
すなわち、自分の存在に意味を与えてくれるような深いつながり。
経営においても同じです。
何でもかんでも繋がればいいわけじゃない。
「誰とどうつながるか」が、その組織の在り方を決定づける。
利益や拡大の先ではなく、想いの共有のなかに、経営の本質がある。
それはまるで、共に祈るように、共に道を歩むような、深くて静かな関係性。
経営とは「関係性のデザイン」である
経営とは、組織のかたちをつくることではなく、関係性を育てていく営みです。
- 社員との関係性
- 顧客との関係性
- 取引先や地域との関係性
- そして、自分自身との関係性
これらすべてが、企業や事業の“輪郭”を形づくっていきます。
言い換えれば、経営とは「関係性のデザイン」。
数字や戦略はあくまで道具であり、その奥には必ず「つながりの質」が問われているのです。
数値は関係性の鏡である
そして、ここでもう一つ大事な視点があります。
それは──
数値は“目的”ではなく、“関係性の鏡”であるということ。
売上、利益、離職率、フォロワー数──
それらはすべて、誰かとの関係がどうあったかを映し出す指標です。
たとえば、売上が落ちたのは商品が悪かったから?
あるいは、お客さんとの信頼が少し離れてしまったから?
数値は問いの「答え」ではなく、問いを開く入口にすぎません。
だから経営において数字を見るときは、こう問うべきなのです:
- この数字の向こうには、どんな人がいる?
- 私たちは、どんな関係を育てようとしている?
- そこに誠実さはあっただろうか?
数字を求めるだけでは、人も組織も疲弊します。
でも、数字を聴く耳をもって見つめれば、経営は人間らしさを取り戻していく。
経営とは「生き方」を問うこと
こうして振り返ってみると、経営とは結局、
「どんな生き方を選ぶか」という問いに行き着きます。
- どう在りたいか?
- 誰と生きたいか?
- 何を手放し、何を守り抜くのか?
経営とは、関係性のなかで自分を問い続ける営み。
その過程で浮かび上がってくるのが、理念であり、文化であり、未来への方向性なのです。
最後に──数字の向こうに、縁を聴く
経営をしていると、つい数字を追ってしまうことがあります。
でも本当は、数字の奥にある“縁”を聴く感性こそが、経営者に必要な力なのかもしれません。
数字は移ろいゆく。
でも、人と人とのつながりには、一度きりの尊さがある。
経営とは、その尊さに日々向き合い、
「経を営む」という祈りのような生き方を、組織というかたちで表現していくこと。
数値の奥に、縁起の世界を見つめる。
そんなまなざしをもった経営が、これからの時代を静かに照らしていくのだと思います。







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