※この記事では、「色」や「空」といった『色即是空』の概念を扱っています。
※「色」と「空」、そして『色即是空』の意味をより深く知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
指しゃぶりに悩んでいた日々
3歳の娘は、いつも無意識に左の親指をチュッチュと吸っていました。
やめさせたいと思っても、無理に止めさせようとすると逆効果。
「どうしたら自然にやめてくれるんだろう」
親として悩む日々が続きました。
そんなときに出会ったのが、くせさなえ作の絵本『ゆびたこ』です。

『ゆびたこ』とはどんな絵本?
『ゆびたこ』は、指しゃぶりをテーマにしたユーモラスでちょっと怖い絵本です。
主人公の女の子の指にできた「ゆびたこ」が関西弁で話しかけてきます。
「もっと、ゆびしゃぶりして わいのこと おおきくしてや〜」
「すってくれよー」
まるで生きているように指と会話する場面は、笑えるのに背筋がゾクッとする不思議な迫力。
我が家では関西弁を話す妻が読み聞かせてくれたので、娘にも一層リアルに伝わりました。
指しゃぶりという「色」と、その裏にある「空」
子どもにとって指しゃぶりは「色」──目に見える行動です。
けれど、その行動の裏には「空」と呼べるものが潜んでいます。
それは例えば、
- 心を落ち着けるため
- 不安を和らげるため
といった目に見えない心の働き。
「空」とは、行動を支える意味や感情のことだといえるでしょう。

『ゆびたこ』がもたらす「空」の入れ替え
この絵本のすごいところは、子どもの心の「空」を別のものに入れ替えてしまうことです。
物語の中で女の子は、ゆびたこが大きくなりすぎて、家族に迷惑をかけてしまう場面を想像します。
その恐ろしさに気づいたとき、自然と「やめよう」と思うのです。
つまり、
- 「不安を和らげる空」から
- 「不安を増幅させる空」へ
と、裏にある関係性が書き換わるのです。
そのページを開いたとき、娘は動きを止め、ジッと絵を見つめていました。
娘なりに内省していたのでしょう。
彼女は「自分のため」ではなく、「家族に迷惑をかけないため」に指しゃぶりをやめようと感じたようです。
そこには、他者を思いやる心が芽生えていました。

娘の変化──翌日からピタッとやめた
『ゆびたこ』を読み聞かせたのは、ある日の夜のことでした。
そのときはじっと絵を見つめ、考え込んでいる様子を見せた娘。
そして驚いたことに、翌日から指しゃぶりをしなくなったのです。
親として「本当にやめられるのかな?」と半信半疑でしたが、それ以来、娘は自然と指しゃぶりを卒業しました。
強制ではなく、自分の心で納得してやめた姿を見て、絵本の力の大きさを改めて実感しました。
絵本が育む利他性と想像力
今回の体験から、絵本には「利他性を育む力」があると実感しました。
親が「やめなさい」と言っても響かないことが、絵本を通して「自分で気づき、周囲のために行動を変える」という形で実現したのです。
これは単なる習慣改善ではなく、心の成長そのもの。
絵本を読むことで、子どもは他者を思いやる想像力を育てていきます。

絵本から学んだこと
今回の出来事を通して私が強く感じたのは、「空は移り変わる」ということです。
絵本が子どもの想像力を刺激することで、行動の裏にある「空」が変わり、結果として行動そのものも変わる。
子どもは「やめさせられる」のではなく、「自分で気づいてやめる」ことができる。
それこそが絵本を通して得られる大切な学びだと思います。

まとめ:移り変わる「空」と絵本の力
『ゆびたこ』は、ただの「指しゃぶりをやめるための絵本」ではありません。
行動の裏にある「空」が移り変わる体験を子どもに与え、さらに他者を思いやる心を育ててくれる絵本です。
娘はこの絵本のおかげで自然に指しゃぶりをやめました。
そして私は、絵本が子どもの心に「利他性」と「想像力」という大切な芽を育ててくれることを、改めて実感しました。
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